
4巻目です。個人的にこの巻がとても好き。雪哉が学生生活をおくっている!って、なんとなく年相応の生活をしているように見えるから。ま、そうではないことが最後にわかるのですが…。
それでも、茂さんや千早、明留との出会い、市柳との再会?は友達というか仲間が増えるようで、なんとなくうれしく感じた。(それを目的にしている感が最後に押し寄せてきて、年齢相応の生活とは…となったけど)
そして、空棺の烏とは誰だ!
おい、聞いたか。今年は、とんでもない化け物が入ってくるらしいぞ
確かにね。あの雪哉が自分から入るっていったんだもん。最初は勁草院に入るのが罰で逃げ回ってたんだもんね。自分から、それも襟を正していくって言ったんだから、何か目的をもっていったに違いないよね。
「疾風に勁草を知り、厳霜に貞木(ていぼく)を識(し)り、荒嵐(こうらん)に泰山(たいざん)を見る」ーーー強い風が吹いてこそ、芯が強い草が明らかになる。また、厳しい霜が降りた時に、貞(ただ)しい木を知ることが出来るように、真の困難に遭った時こそ、真の強者が明らかになるのだ。
初学年、荳兒(とうじ)芽も出ていない荳(たね)。学年末の風試に合格すると、これが芽吹いて草牙(そうが)となる。1年後、霜試を乗り越え、最終学年となれたものは貞木(ていぼく)と呼ばれる。最後の嵐試でよい成績を収めたものが山内衆となれる。
ちなみに、雪哉の代の入峰(にゅうぶ)は44名、卒業したのは8名だった。
昨年の夏以降、甘ったれたことを言っていられなくなりまして
南家筋の公近と最初のバトル後に、市柳と茂丸と雪哉との話の中で…。昨年の夏とは、サルの襲撃があった夏。これが、3巻ですね。
雪哉の地元の垂氷郷の栖合、茂丸の地元風巻郷の佐座木、この二か所がサルの襲撃をうけたところ。他の烏と危機感が違うのは当然ですね。そのときのエイタが気になるんだけど…。
茂さんが「もしかしたら、ほかに何かできたことがあったかもしれないのに、なんて、悔いるのだけは絶対に嫌だった」ことに雪哉が「その気持ち、僕もすごくわかる」と。で、喜色満面に「茂さんと仲良くなれてよかったよ。絶対、一緒に山内衆になりましょうね」と。
この言葉が、院生として仲間ができるうれしさと、若宮の側近としての仲間ができるうれしさの2種類の意味があったはず。でも、茂さんのことは本当に大好きで頼りにしてた、心のよりどころというか、良心だったのかも。
力の使いどころを間違えるなと言っている
明留に説明する雪哉をみていると、どうしてそこまでのことをこの若さで考え、行動できるのかが本当に疑問。一度読んだらすべて覚えてしまうとか…。それでも、一度読んだらおぼえる人ってたまにいるよね。
その上、人を動かすのもうまい。切り札の使い方というか?「本当に信用できる仲間を得ようと思ったら、身分やら権力やらに頼っていてはダメなんだよ」といいつつ「今となっては、使えるものは何でも使うつもりだよ」とくる。
すっごく明留を心配してるのに、そんなところを見せずに必要なことだけ伝える。でも、あとから茂さんが補足している。茂さん、人生経験が違いすぎる気が…。
「山烏相手に謝るなんて、お前も成長したんだな」って。明留っていいとこの坊ちゃんで実力もプライドもあるけど、ちゃんと自分の否を認めて素直に謝れるってすごい。さすが、真赭の薄の弟って感じ!このあと千早に対して「馬鹿にするな!友情を金で買おうとするほど、僕は落ちぶれていない」って叫んじゃうとことか。
この辺りがやっぱり好きなんだ。雪哉、目的のために勁草院にきてるけど、ちゃんと青春してる感じもあって。
だったとしても、それを僕が言うのは、許されないでしょう
院生として接していた清賢への言葉。「君が若宮殿下の臣下として、院生達を利用している面があったのは事実としても、その一方では院生として、純粋に仲間を想う君もいたと思っている」「君は、化け物を倒すためには、己も化け物になるしかない、と思っている。違うかい?」
雪哉に対して、年齢相応どころか若宮の片腕の働きをしている事実を知っていてもなお、こんな風に院生と教師として接している唯一の先生。途方にくれた表情をしてしまってもおかしくない。もう、弱音を吐ける場もどんどんなくなってきているのかもしれないね。
お前ってさあ、時々、一人でおつかいをしている子どもみたいに見えるんだよな
そんな中でのこの茂さんの言葉。雪哉もビックリだよね。清賢先生と同じようなことを言ってる。茂さんは雪哉とよく似た表情をしていた男の子を知っていたとあるけど、これはエイタのことなのかな?
「お前の後ろには、俺たちがいるって忘れるなよ」この後起こることを思うと泣ける。
もしかしたら第二の君になるのではないかと
鮎汲の治真。この後、波乱の人生になっていくんだよ。手始めに、猿にさらわれるし…。そこで、本人がどんな風に思考が動くかで、雪哉はそれ相応に動かすんだろうな。
百年前に神域で、一体何があったのでしょう
治真が猿にさらわれたことで、若宮は猿に会いに行く。雪哉は治真を助けたかったけど、立場上言えなかった。また、茂さんが「よかったな、雪哉」って。ほんと、察する茂さんすごいし、雪哉だってこんなに意を汲んでくれる仲間がいるのは心強い。
人を喰ってない子猿との対面。実はこの子猿は前の金烏にやさしくしてもらっていて、自分にできることをしたかった。「扉を開いて」と。「山神さまが駄目になる。烏、猿、みんな駄目になる。この道開けば、少しよい」と。
でも、烏陣営は過去の記憶がないし、人喰い猿に襲われるし、さらにその扉をふさいだのは先代の真の金烏。自分の眷属を守らないといけないという記憶だけが戻る。扉をあけて中にはいると、猿に襲われたこともあり扉を閉めた。子猿が「駄目、逃げる、駄目、多分、これが最後」というけど。
本当に、この時が最後のチャンスだったんだね。
空の棺は、ようやくその主を迎え入れることができた
扉に結界をはったのは、先代金烏の那律彦。そして、その遺骸を持ち帰り、空の棺に迎え入れ、金門の横に立てかけると、そこから水があふれだした。
那律彦は博陸侯景樹(はくりくこうえいじゅ)を、景樹(かげき)を逃がそうとしていた。なぜそうなったのか、金門の向こうにある脅威はわからないまま…。
勁草院の卒院の儀
第三席。風巻の茂丸。力に驕らず、大切なものを守ることに誇りを感じるそなたとともに…山内衆に任じる。招陽宮の警備を任せよう。
次席。南風(はえ)の千早。弱きものを想い、横暴に屈さぬ心を持つそなたとともに…。山内衆に任じる。私の護衛を任せよう。
首席。垂氷の雪哉。そなたが今の時代、ここに存在していることを、私はこの上ない幸運と思っている。私にはできぬ方法で、八咫烏を助けてもらいたいと思うが…山内衆に任じる。私の護衛、そして山内衆の作戦参謀を任せよう。
翌年、朝廷の機能は凌雲宮へ遷される。その後、山内を未曽有の大地震が襲う。
おわりに
雪哉の学生生活が垣間見れる巻でとても好きな巻。第一部で一番好き。それでも、後半では院生としてではなく、幹部側だったことがわかるし、すべては目的のためということもわかった。でも、よい仲間や先生に巡り合えたことはすごくよかったし、この時が最後の幸せなひと時だったのではないかと思える。
人は追い込まれるとどこまで残酷になれるんだろう。でも、上に立つものは判断できないといけない。被害を少なくするためには見捨てる人を選ぶことでもあるから…。
次の、5、6巻はまたセット。1,2巻と同じように、一つの方向からみた物語と、もう一つの方向から見た物語。著者さんは5巻の玉依姫の原型を高校生の頃に書かれたとか…。楽しみだ。

つかの間の青春を感じたい人に。

