
さて、3巻目。ここから本題に入っていく感じがしますね。2度目以降に読むには、ちょっと辛いなあと私は躊躇するこちらの巻。雪哉の1度目の転機じゃないかと思う。
小梅とのこともそうだし、若宮とのこともそうだし…。今まで以上に壮絶な場面に遭遇して、急激に大人にならされた、知らないが許されない、行動しないと命の危機。もう、今までのままじゃいられない。
雪哉は本当に家族を大事にする。そんな雪哉を家族は大事にする。これも後々悲劇につながっていくんだったような…。
「朝廷におかえり、雪哉」
浜木綿、意地悪く笑っているけれど、うれしいよね。いや、うれしいのか!?こんなタイミングで顔を合わすのはつらいことでもあるよね。成人前でかわいい雪哉なんだけど、でも若宮が全幅の信頼をおいている雪哉が自分でここにきてくれた事実はうれしいことなのかもね。
「バレなきゃいいんだよ」って言いながら、若宮に全面的に協力して、どうしてもだめな一線はきちんとわきまえていて、本当にこの烏はステキだ。そりゃおいおい「すべて皇后の言うとおりに」と言わしめるよね。
「そうまでして金烏になって、一体何がしたいのだろう?」
まだ、金烏が何か知らないとこうだよね。知らなかったから「金烏の座を諦めれば、命の危険にさらされる毎日からおさらばできるに違いない」だった。権力にこだわっているようにみえたから、配下にならなかった。くだらないと思うもののために命を懸ける気にならなかったから…。
でも、そう考える根拠が崩れてきた。ここで、行動にでれた雪哉は若宮のことが気になって仕方がなかったんだよね。自分の領地で悲劇が起き、解決の糸口をさぐるために一歩踏み出した。
まあ、「金烏になる」んじゃないんだな。
「今日の会談は、多分失敗するぞ」
一歩踏み出したとたんに、これだ。路近からの一言。路近はどんな経歴だった?長束の言動や行動をほとんどセーブせず、失敗も経験すればいいって感じにしているけど…。だって長束が「地下街に、そなたも同行してほしいのだ。北家当主の孫として」って言ったときも止めなかったし…。路近がすごすぎて…。
第二部でもそういうことがあったと思う。いい部下とは…みたいな。それは今から順に読んでいこう。
「ねえ、どうしよう。あたしのお父さん、死んじゃった」
この小梅と雪哉のすれ違い。ほんと、どちらも辛い。信じてほしくて信じてもらえなかった小梅も、信じたいけどいろいろなものを見すぎてしまって信じ切れない雪哉。
ここでやっと和解できたかと思えば、直後に悲劇が起きる。それも、「いける」と思っていたことがダメだった。それも、「知らなくて」起きたこと。
こんな現実とは思えないような出来事が立て続けにおこるとそりゃ人生観変わるよね。
「こんな時こそ、やるべき事は山のようにあるだろうが」
そうなんだ。でも、動けないんだよ。でも、それを叱咤できる浜木綿、マジすごい。一番つらいだろうに…。
私は目の前で「今夜が山です」と言われた娘を見つつ、本当に何もできなかった。山を越えた時のために寝ておこう、寝ないとだめだ、と思ったけど全く寝れなかった。食事もとれなかった。一人で付き添っててほんとうにおかしくなりそうだった。
「だから、そのしたり顔を、今すぐ止めろ!」
路近はこの時点でどんな未来を描いていたんだろう。長束に、もっとドロドロしたものもシビアなものも、自分の尺度では測れないものがあることを経験させようとしていたんだろうか。長束は「大金なんぞのために…」って言ったのを浜木綿に説明されてた。
人は、経験したことからしかわからないことがある。なんでも経験しないとわからないわけではない。でも、経験してみないとその辛さはわからないことが多いのも事実だ。
「そうだったとしても仕方がない」
金烏としての自我はあっても、八咫烏としての心がない、と。相手の気持ちを経験則から想像できても、共感はできない、と。でも、雪哉も浜木綿も「信じられない」って。奈月彦の心はあるけれど、本人が知覚できないのだろうと。
どんな悪烏も善烏もすべてが大事な金烏。誰が死んでも、最愛の人を失ったときと同じ悲しみを味合わないといけない。それを理解してくれる仲間がいることで心安らかなときがあり「仕方がない」を飲み込んでいけるのかな。
「どうか、配下の末席に加えてください」
とうとう、決断したね。喜ばしいことなのか悲しいことなのかそれはわからないけれど。
それにしても、どれだけの力を秘めていたんだろうね。「勝算がない勝負はいたしません」って。
突然さ「真の金烏陛下に、伏してお願い申し上げます。これより後、わたくし垂氷の雪哉は、この命尽き、体朽ち果て、魂の最後の一片が消えてなくなるまで、あなたさまに忠誠をお誓い申し上げます」って。
それでさ、若宮は「その言葉を待っていた」と満足げに、そしてどこか寂し気に笑ったって。
若宮だってまだまだ若いよね。雪哉は元服が15歳で元服前って言ってなかった?立場が人を作るっていうけど、ほんとそうなのかもね。その立場で血がにじむような経験をしていくんだね。
おわりに
壮絶な出来事がたくさんおこったけど、でもさ、この巻って雪哉の青春でもあると思うんだよね。小梅との。そんな青春がこんなに心をえぐられるような経験とセットなんて、これから先が怖くなるね。
読み返すと、長束と路近の関係も興味深い。そして、浜木綿の動きも。主従関係って本当に難しい。主の意を汲むってね。そんな、それぞれの積み重ねも目に付くようになっているのでどんどん先に進んでいくよ。
次の、雪哉のもう一つの青春も好きだ。私は第一部で一番好きな巻だと思う。

迷って悩んで後悔して…。人生の決断の時を見たい方は是非。
